【読書】スーパーカブ (角川スニーカー文庫) / トネ・コーケン(著)

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この本との出会い

スーパーカブ(トネ・コーケン)

カブに乗っていると、自然に耳に入ってくる情報があるものです。
例えばアウトスタンディングモーターサイクル(通称:アウスタ)というカブパーツにやたらと特化した通販サイトの存在だったり、この夏のカブシリーズの生産終了の知らせであったり。

小説「スーパーカブ (角川スニーカー文庫) / トネ・コーケン(著)」も、そんなふうにしていつの間にか気になっていた一冊です。

twitterで同じくカブに乗っているフォロワーの方が「読んだ!」とツイートしていたのを切っ掛けに、俄然興味が湧いてついに手にとりました。

あらすじ

お金も趣味も物事への関心も無ければ、ついでに友達も親もいないという「ないないの女の子」小熊(こぐま)。

山の上にある高校まで自転車を漕いで通っていた小熊は、ある日中古のスーパーカブを手に入れる。「ないない」だった小熊の生活に生まれた、たった1つの例外。スーパーカブが「ある」。

ガソリンが無くなったり、荷物を載せる方法を考えさせられたり、カブに乗っているせいでクラスメイトのカブ乗り「礼子」と昼食を共に過ごす事になったり。スーパーカブによって小熊の地味で平穏な暮らしには数々の面倒事が舞い込んでくる。

「超」が付くほど現実主義の小熊は、中古のスーパーカブにつぎ込んだ生活費の元を取るためにそれらの面倒事を解決していくのだが、そんな生活の変化の中で「ないないの女の子」だった小熊の暮らしが少しずつ色付いていく──。

感想(ネタバレなし)

主人公の小熊は、友達もいなければ親も頼れる親族もいないという、あまりに悲劇的なシチュエーションの高校二年生。

少ない奨学金を頼りに、現代の女子高生像とは決定的に異なる慎ましやかな生活を送る彼女が、ついうっかり手に入れてしまったスーパーカブに振り回されながら人生に彩りを増していく、ひと夏の冒険譚。

節約家で現実主義の小熊のストイックさはなかなかのもので、カブのカスタマイズやメンテナンスをどんどん自力でこなして行く成長振りに、同じカブ主として目を見張ります。
カブを手にして数ヶ月でタイヤのチューブ交換までこなすようになる女子高生とか、かっこいいですね(笑)

カブによって繋がったクラスメイトの礼子。この娘がまた凄い。女子高生ながら一人で郵政カブをフルカスタムして乗りこなす礼子によってもたらされるカブ知識は豊富で、カブオーナーとしてこの本を読んでいた私にとってもカブについて新しい発見が沢山ありました。

礼子が言う、目立つ箱を取り付けた時に生じる「カブの匿名性の消失」などは面白い見解ですし、「カブの1速の意味」などはカッコよすぎて読んでいて鼻息が荒くなりました。私も二度と「1速要らない」とか言いません。

カブという乗り物自体がそうであるように、この本で語られている内容は派手で劇的な大冒険などではなく、基本的に地味でささやかな日常です。空っぽだった少女がスーパーカブによって地味でささやかな日常を楽しめるようになるまでの成長を、カブとの関わりをモチーフに描かれています。

カブ好きであれば楽しめること間違い無しの一冊ですが、カブに興味が無い方が読むともしかするとカブを買うハメになるかもしれません^^

ところで私は電子書籍版を買ったのですが、巻末に「電子特別短編」と題して「セカンドマシン」というショートストーリーが掲載されていました。これは電子書籍限定なのでしょうか。ご興味がある方は参考にしてみてください。

また、2017年10月1日には続編「スーパーカブ2」が発売するようです。こちらも楽しみですね。